うつくしく、もがく
小説もものすごかった。
エンディングへ向けて進む話、
映画を観ていたとはいえ、背筋がぞくぞくと止まらない。
そしてラストに、ただただ心打たれ、しばらく思考停止でした。
自分は本を読むとき、気になった言葉、文章があったら、こっそりとページに折り目をつけます。そして、それをあとで読み返し、ここ、ここ!っていうとこにラインを引きます。
今回の「君の名は。」にももちろんたくさんの折り目とマーカー。
それらを書き出しますので、観た方、読んだ方、しばしお付き合いを(笑)
・ずっきゅーんと、私の心臓が跳ね上がる。それは手持ちの何もかもを無償で差し出したくなっちゃうような最強の笑顔で、今日の東京で目にしたものの中で一番尊いと、私は思った。
・虹色のシャワーを浴び続けてたみたいに、カラフルでわくわくした一日だった。BGMなんてかけなくたって、世界はずっと輝いていた。
・糸を繋げることもムスビ、人をつなげることもムスビ、時間が流れることもムスビ、ぜんぶ、同じ言葉を使う。それは神様の呼び名であり、神様の力や。わしらの作る組紐も、神様の技、時間の流れそのものを顕しとる。
・ムスビだ、と俺は思う。水でも、米でも、酒でも、何かを体に入れる行いもまた、ムスビという。体に入ったものは、魂とムスビつくから。
・へその緒が断ち切られる。最初は二人で一つだったのに、つながっていたのに、人はこうやって、糸から切り離されて現世に落ちる。
・そうだ、こういう時間帯の、呼び名があった。黄昏(たそがれ)。誰そ彼(たそかれ)。彼は誰(かはたれ)。人の輪郭がぼやけて、この世ならざるものに出逢う時間。その古い呼び名。俺は呟く。―カタワレ時だ。
・女子との会話って無理ゲーじゃん・・・・・・。
と、ぷっと三葉は吹き出す。お腹を抱え、くすくすと笑い出す。なんなんだこいつは、泣いたり怒ったり笑ったり。その姿を見ているとしかし、俺の胸にもおかしさがこみ上げてくる。俺はうつむいて片手を顔に当て、くっくっと笑い出す。三葉も笑っている。なんだか楽しくなってくる。俺たちはそろって大きな声で笑う。柔らかく輝くカタワレ時の世界、その端っこで、俺たちは小さな子どものように笑い続ける。
・大事な人、忘れちゃだめな人、忘れたくなかった人!砂が崩れた後に、しかし一つだけ消えない塊がある。これは寂しさだと、俺は知る。その瞬間に俺には分かる。この先の俺に残るのは、この感情だけなのだと。誰かに無理やり持たされた荷物のように、寂しさだけを俺は抱えるのだと。
・―いいだろう。ふと俺は、強くつよく思う。世界がこれほどまでに酷い場所ならば、俺はこの寂しさだけを携えて、それでも全身全霊で生き続けて見せる。この感情だけでもがき続けてみせる。ばらばらでも、もう二度と逢えなくても、俺はもがくのだ。なっとくなんて一生絶対にしてやるもんか―神様にけんかを売るような気持ちで、俺はひととき、強くつよくそう思う。自分が忘れたいという現象そのものも、俺はもうすぐ忘れてしまう。だから、この感情一つだけを足場にして、俺は最後にもう一度だけ、大声で夜空に叫ぶ。「君の名は?」
・誰、誰。あの人は誰?
大事な人。忘れちゃだめな人。忘れたくなかった人。
誰、誰。君は誰?
君の、名前は?
・私は恋をしている。私たちは恋をしている。だから私たちは、ぜったいにまた出逢う。だから生きる。私は生き抜く。たとえ何が起きても、たとえ星が落ちたって、私は生きる。
・俺は別に、ふしあわせじゃない。でも、しあわせがなにかも、まだよく分からない。
・俺は今ももがいている。大袈裟な言い方をしてしまえば、人生にもがいている。かつて俺が決めたことは、こういうことではなかったか。もがくこと。生きること。息を吸って歩くこと。走ること。食べること。結ぶこと。当たり前の町の風景に涙をこぼしてしまうように、あたりまえに生きること。
-解説より-
・人は大切なことを忘れていく。けれども、そこに抗(あらが)おうともがくことで生を獲得するのだ。
こうやって、書き出してみて気づいたこと。
「君の名は。」が伝えたかった事、それって生きるっていうことだったんだ、と。
映画を観たときは、ただたんに絵が美しいなぁとか、どんぴしゃでかかる曲がヤバかったなぁとか、飽きさせない展開だなぁ、という印象でしたが、そこに行き着いていたのか。
そして、その生へのもがき方を、美しく描かせるのが新海誠監督の真骨頂なのだと。
この小説は2016年6月25日が初版ですが、その解説に、
残酷なこの世界で「うつくしく、もがく」少年少女のラブストーリーを描いた映画「君の名は。」が、間もなく完成する。間違いなく「新海誠のベスト盤」、いや言い直そう。「新海誠の最高傑作」が誕生する。
予定調和だったのか。
周りにシンチャさん、あんたは綺麗すぎるんだよ、クリーンなんだよ!と言われ、正直どう受け取ったらいいのか分からなかったけど、「君の名は。」を読み確信した。
以前リカバリーストーリーの草案を先生に見せたとき、
「あなたの苦しさはこんなもんじゃないでしょ?もっともっとどろどろとした辛さ苦しさあったでしょ?こんなふうに教科書的にまとめても、私は許さないから。」
そのくらい私はもがいていた、そしてこれからももがく、
美しく